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通貨選択型ファンドのメモ・高分配の秘密その2


更新日:2011年11月18日(金) 
※このコラムは3部構成となっています。その1はこちら


<通貨選択型ファンドの利益の源泉>
通貨選択型ファンドの利益の源泉は大きく三つあります。
@利回りの高い債券・株式・不動産など(格付けが低い債券)
A為替予約取引高収益のポイント
B為替の変動(円高で損が出る。)

     ※図にあらわすと以下のようなイメージです。
     

これから三つの利益の源泉についての説明に入ります。
説明は「野村米国ハイ・イールド債券投信(ブラジルレアルコース)」を例にとって行っていきます。


(@利回りの高い債券・株式・不動産など)
 利益の源泉その1は、格付けの低い(Aではなく、BBやBなど)債券です。
野村米国ハイ・イールド債券投信(ブラジルレアルコース)の場合で確認(運用報告書の閲覧)してみましたところ、組み入れ銘柄の中には、「フォード(自動車)」「アメリカンエアライン(航空会社)」など、知られているアメリカの会社名がけっこう載っています。米国の普通社債利回りは、2008年の金融危機時に大きく上昇し、高利回り社債は一時、20%を超えるまで高まりしました(下図:リンク先より抜粋)。

      

2009年1月28日に野村は14本もの米国ハイイールド債券投信を設定しましたが、この金融市場の大幅回復を見通していたのでしょうか。購入するとしたらこの時期しかなく、絶妙のタイミングだと思います。(FRBが金融政策で市場にお金をじゃぶじゃぶ流していたので、金融不安は後退すると読んだのでしょう。結果、金融不安は取り除かれ、米国社債は買われて元の水準に近づきました。)

このように、高利回りの源泉理由の一つに、
「金融危機により一時的に下落した米国社債を購入した。」というのがあったようです。
(通貨選択型の発想は、こういったリスクの高い資産を初めに購入しているところがポイントです。)



(A為替予約取引について)通貨選択型と呼ばれるポイント!
 二つ目の利益の源泉は為替予約取引にあります。
ブラジルレアルを例にとりあげて、ざっくり説明するとこういうことをやってます。
(通貨選択型ファンドでは最も重要な取引です。)


〜〜〜とある街の為替予約取引所・エヌデーエフにて〜〜〜
あなたは手元に1ドル持っています。
あなたは為替予約取引所に行き、この1ドルとブラジルレアルを交換してもらおうと思ってました。

為替取引所のおじさんはこう言いました。
「いま、1ドルをブラジルレアルと交換するなら、1.6ブラジルレアルと交換できるよ!」
さらに続けておじさんは言いました。
「あ、いまじゃなくて3カ月後に交換なら、1.7ブラジルレアルと交換するよ!」ですって。

いま交換するのではなくて3カ月後に交換するのなら、1.7ブラジルレアルももらえます。あなたは、3カ月後に交換する方を選びました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・三ヶ月後・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、

おじさんとの約束を果たすために為替取引所に行き、1ドルをおじさんに渡しました。
「ハイ、これ約束の1.7ブラジルレアルね!」
あなたは1.7ブラジルレアルを手に入れました。

「待ったおかげで、0.1ブラジルレアル多くもらえた☆」と、喜びながら為替取引所をふらついていると、、、、ちがうおじさんから、こう声をかけられました。
「今なら1.5ブラジルレアルと1ドルを交換するよ!」

すかさず、あなたは手元に持ってた1.7ブラジルレアルを、おじさんにつきだしました。
「えっと、1.7ブラジルレアルだから、、、1.7÷1.5で、ハイ、これ1.13ドルね。毎度!」

見事あなたは1ドルから、1.13ドルに増やすことができましたとさ☆

〜〜〜終了・めでたしめでたし〜〜〜


、、、、とりあえず、こんなような取引をファンドは行ってます。本当は為替予約取引所ではなくて、NDF市場で取引が行われて、差金決済って言ってレアルは実際には介さずに、おもにドル取引で終了なんですが、大枠さえつかめればいいかなと思います、ざっくり説明させていただきました。

要するに為替予約取引(将来のある一定時点における通貨の交換取引)で稼いでいるということです。

しかし、なぜ1ドルが1.6ブラジルレアルで交換されるものが、三か月待てば1.7ブラジルレアルになるのか??

ポイントはそこなんですが、
三か月待てば1.7ブラジルレアルとなるのは、「ブラジルの方が金利が高いから。」です。
ブラジルはインフレ常習国なので金利は10%以上と他国に比べて高く推移しがちです。

手元にあるのが1.6ブラジルレアルでも、三カ月たてば金利10%分以上は、上乗せされてないと理論的にはおかしいですよね。なぜなら、そのまま銀行に預けておけば金利はつくのですから。

だからおじさん(NDF市場)は、三ヶ月後はちょっと高めを提示してくれました。
為替変動の影響を取り除くために、ヘッジをこうやってかけておいて、想定していたよりも、ドル高レアル安が進まないと、差額分が為替ヘッジプレミアムとして手に入るわけです。
ただ、いつもそう上手く利益がでるような為替レートを提示されるとは限りません。

参考までに、、、為替予約取引状況が、運用報告書に記載されていますので見てみてください。

      

(ブラジルとオーストラリアドルの為替予約取引状況ですね。評価損益にご注目ください。ブラジルのマイナスもプラスの額も大きいことがわかりますでしょうか。通貨リスクの高さはこの数値から読み取ることも可能です。暇があればどこの通貨のリスクが高いのか、見てみてください。参考リンク:運用報告書入手ページ


為替予約取引のポイントは、ブラジルの金利が高いってことはもちろんですが、それ以上にアメリカの量的緩和が大きいかな、と個人的には思ってます。

金利差を考えると、本来ならばブラジルレアル安に進むはずなんですが、アメリカは金融市場をドルで溢れさせてますから、ブラジルは通貨の発行で負けてしまっています。さらに言えば、欧米の金融機関・ファンド勢がアメリカで多額のドルを資金調達して、そのお金をブラジルに投資しています。私たち個人投資家が気付いてて、プロ達がこのブラジルとアメリカの金利差に気付いていないわけはないですからね


ブラジルの首相は、こういった機関投資家の投機行為に対してバシバシ税金をかけて追い払おうとしたんですが、そこに日本の個人投資家(ブラジル投信・ブラジル国債購入など)が次から次へと乗っかってくるのでなかなか追い払えない。

通貨選択型ファンド(レアルコース)は、このプロたちの勢いも上乗せされて成功を収めているというわけですが、、、もちろん個人投資家である私たちが上乗せさしている、ともとれます。

(※2011年9月の欧州危機時にこの動きが一時、逆流しました。レアル高が突如としてレアル安へとふれました。原因は、ドルが金融市場で枯渇しそうだったからみたいです。金融機関やファンド勢は、ドルを準備しておこうと、ポジションを解消させていったんです。これに対して世界の中央銀行がドル供給の対応をしていました。参考:日本銀行・・・・これはブログでも取り上げています。)


(B為替の変動について)
 これは普通に円高になれば、為替差損を被るという理解で良いと思います。
具体的には、円と通貨対象国との為替変動の影響です。


次のページが最後です、、、かなり長くなってしまったので3分割しました。

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