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グローバル・ソブリン・ファンドを振り返る(毎月分配型ファンド)


更新日:2011年11月16日(水) ブログより抜粋(一部補足)

<はじめに:グロソブの歴史>
このサイトを開設した当時(2006年初頭)に大盛り上がりしていたファンドがありました。

『グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)』です。

「毎月分配金がもらえる、毎月お小遣いをもらう感覚で資産運用をしてみませんか?」
こんな感じのふれこみで、富裕層や高齢者層を中心に人気を博していたような覚えがあります。

グローバル・ソブリン・ファンドでは、いったい何で運用しているのかと言うと、
グローバル(世界)・ソブリン(公的債券)という言葉からわかるように、外国先進国(信用力のある国)の債券が中心となっています。

このグロソブが設定された頃(1997年末)の日本は、国債10年物利回りが2%を切ろうとしている水準(1.9%)でした。これに対して他国の10年物国債利回りは、アメリカで5.8%ドイツで5.3%と二倍以上の差が開いていました。

当時の日本はお金余りが続き、金利が下がっていく方向にあったため、預貯金に置いておいても増えません。そこで運用設定会社は、この金利差に目をつけたわけです。

「高金利高分配ファンドなら、預貯金から流れてくるだろう、ビジネスチャンス到来だ。」
と。
(もちろん、1996年から行われた金融の規制緩和・金融ビッグバンの影響も大きかった。)



そのグローバルソブリンですが、2008年の金融危機より運用状況が悪化、毎月もらえるというお小遣いも減配により、少し減らされました(40円⇒30円)。参考ページ:モーニングスター

その後、2009年に持ち直しつつありましたが、欧州債務危機が不安視された2010年よりじわじわと悪化、これに円高も重なり、また台頭する通貨選択型ファンドへの乗り換えも進み、資金流出は進みます。

そして今回の欧州債務危機の表面化でさらに資金流出が進んでいます。
(それでもなお、2兆円という運用金額を誇っているのは凄いですね。更新当時)



<グローバル・ソブリン・ファンドの運用実績検証>
毎月分配金を出す投資信託というのは、批判の対象とされがちです。

なぜ批判されるのかというと、
「毎月分配金が出ていると言っても、結局投資したお金を取り崩してるだけではないか?」というもので、投資の複利効果が得られていないという意見です。(参考コラム:複利の研究
投資したはいいけれど、結局、すぐに引き出している事と同じになってしまってるんです。そこが批判の対象となっているわけです。(参考コラム:分配金のメリット・デメリット

このグローバル・ソブリン・オープンは、根強い人気の通貨選択型ファンドに通ずるものがある(人気が出た理由も同じ分配金がある点)と思っているんですが、毎月分配金が出る投資信託に対する批判は当時も現在も同じ理由です。


グローバル・ソブリン・オープンの過去10年の動きを見てみます。

      

2008年の基準価格は8,000円付近、これが現在は5,000円付近となっています。(37.5%の減少)純資産額も5兆円からずるずると資金流出が進んでいるのがわかります。ここから2008年以降は、他のファンドに乗り換えていることが推測できます。(通貨選択型ファンドの登場は2008年8月)

この数値だけでこの運用成績を判断するのは早とちりで、毎月支払われた分配金も含めたうえで判断しなくてはいけません。


分配金を加味するとどうなるかというと、、、、

    
   (リンク先:モーニングスター
2008年の基準価格(分配金込)は10,915円、現在は9,500円付近です。
2002年以降の上昇は、円安ユーロ高による影響で、当時は日銀の量的緩和(お金をじゃぶじゃぶ市場に流す金融政策)や円キャリートレード、グローバル・インバランスなど、円安に振れやすい状況が揃っていました。

その後、2008年にサブプライムショックが起こり、円高の方向へと進み、運用の悪化が始まります。
2009年にドバイショック、それを契機として2010年にギリシャショックが起こり、2011年9月のユーロ危機へと続いていきます。


2008年、年初のグロソブで投資されている国別割合は、1位がユーロで4割、2位がアメリカで2割、3位日本で1割と続いています。この後に相当なユーロ安が進んでいることから、運用は大幅に悪化しているだろうと思ったのですが、、、、2006年の頃に自分がイメージしていたものと運用成績は大きく違っていました。

というのも運用悪化は続くけれど、同時に分配金を少しずつ出しているので、運用悪化を和らげる効果があったようです。さらに言えば、分配金を再投資に回していた場合の方がリターンは悪化していました。これは再投資に回した結果、損失を受ける元本が高まったためといえます。


この結果、理論上、リターンが大きいとされる株式投信と比較すると比較的良い成績となります。
下の図は、グロソブとインデックスファンドTSP(株式)との基準価格の比較チャートです。

     

赤線がグローバルソブリンファンド、青線がインデックスファンドTSPです。
わずかにグロソブが負けているように見えますが、分配金込みで考えるとグロソブの方が上です。
上でも書きましたが、グロソブが定期的に分配金を拠出するという形で現金化(損益の確定)を行っていたことが、株式を上回る結果へとつながったのです。

投資の理論を考えると、分配金をもらうことは、複利の効果が小さくなるので投資している意味が無いように思えます。しかし、それはその時々の時代の状況によらないといけないのでしょう。

注:資産運用の教科書で書かれていることを正とするならば、株式と債券を比較することは好ましくありません。株式と債券は、まったく違った性質の資産だからです。市場が理論通りの動き(株価は上昇)をすれば、債券を大幅に上回ります。事実、2006年までは理論通りでした。誤解のないように、、、、



<まとめ>
購入者が富裕層に多かったことと、高齢者層が多かった点はグロソブの狙い通りだと言えたでしょう。
とくに、分配金ファンドには、以下の二つの利点が存分に発揮させられました。

・債券であるために基準価格のブレが少なく、2008年の金融危機にも強い耐性を見せた点
・毎月分配金を流出させることで損失の拡大を押さえた点


2008年の金融インパクトを考えると、高齢者層にはまさにぴったりな運用先だったと言えます。

ただ、この二つの利点が、今後の資産運用に生かせるかと言うと、それは注意が必要だと思います。
問題は一つ目の利点がなくなってる可能性が大きいという点ですね。

先進国の財政がひっ迫しており、とくに債券価格のブレが大きくなっていたり、大きくなる可能性を秘めています。ギリシャやイタリア、スペイン、ポルトガルといった南欧諸国は大きく揺れ動いており、グロソブファンド自身も売却を進めています。

これに対して、信用力のあるドイツや米国、日本はその信用の高さから、債券は投資家に買われやすくなっています。債券価格のブレは南欧諸国に比べれば、小さいけれど、その安全性の高さから利回りも低くなっていくでしょう。分配金の元となる債券の利息が小さいと分配金も小さくなります。
小さい分配金ファンドに魅力はないですからね。

結果的に、いまの個人投資家は通貨選択型ファンドを選択する方向へと動いています。


※若者世代にはこういった投信はやはり薦めづらいです。2008年〜2011年という時期は、言ってみれば不況の時期といえます。不況の時期に債券が強いのは当然の話ですからね。(日本国債ファンドはプラスリターンでのりきってます。日本最強ですね☆)

不景気のうちに株式をコツコツと拾って、上昇相場を待つ。これがシンプルでいいと思いますが、景気が上向いたときに成長力の高い国に投資しておく必要があるかと思います。こういった視点から、今後は新興国投資に対する見直しも進むだろうと予測しています





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