やさしい投資信託ガイドトップ>投資信託コラム(8)>欧州金融危機について4

欧州金融危機について4(短期金融市場の観点からの続き)(2011/11/27)


更新日:2011年11月27日(日) 

※深い考察は控えておいて、、、現状起きている事実を中心に取り上げています。


注:この記事は4本立ての内容となっています。
はじめから読む方は、どうぞ「欧州金融危機について1」から、ご覧くださると分かり易いです。


前回は、欧州という範囲内におけるシステミック・リスクについてお話しました。
今回は、欧州とは別の地域で起こる金融被害についてのお話です。


<欧州金融不安の中で引き起こされる金融被害1>
 こういった欧州金融機関の危険性におびえる中で、引き起こされた一つの出来事として、2011年9月の新興国からの資金流出があげられます。ブラジル、韓国、トルコなどはとくに顕著だったようです。
資金繰りに喘ぐ欧州金融機関が、新興国への投資ポジションを解消し、手元に十分なお金を用意する理由で起こる典型的なパターンです。
(参考例・ロイター:新興国の「欧州リスク」拡大、世界の新たな失速要因に


 直近では、東欧諸国からも資金回収が進み、ハンガリーがIMFに支援を申請しました。原因は、先進国(西欧諸国)からの急激な資金流出によります。(参考例・ロイター:ハンガリー、IMFとEUに金融支援を打診)こういった資金流出は、東欧諸国の金融はもちろんのこと、経済にも大きな影響を及ぼしかねません。資金の出し手の方でも対策は講じられるようになりました。

その他参考となるニュースです↓
(ロイター:ユーロ圏債務危機は東欧や中国にも波及、世界経済揺るがす



<欧州金融不安の中で引き起こされる金融被害2>
 ところで、欧州では自己資本を強化していこうとの方針がすでに決まっています。
(参考例・ロイター:EU首脳が資本増強で合意、中核的自己資本9%に

ただ、この自己資本の強化方法に問題があって、、、、、「誰かに出資(増資)してもらう」、という形でならば、金融被害(資産価格下落による)は起きないのですが、この方法は少数派のようです。危険な銀行に資本を好んで出すような投資家がなかなかみつかりません。

結局、どういう方法がとられるかというと、「資産を売却して借金(負債)を返済する。」という形です。
(少しばかり会計用語が出てきてしまいましたが、↓の図をごらんくだされば言いたい事はわかってもらえると思います。)

       

 この調子で自己資本の強化を急げば、資産の圧縮に伴う被害が考えられます。
例えばA銀行が、自社の自己資本を強化しようと、資産の圧縮(資産と負債を両方減らす)をはかったとしましょう。そして、その売却する資産が、かりにイタリア国債だったとしましょう。

もちろんですが、イタリア国債の価格は、買い手が少ない状況であると急落します。A銀行はその覚悟で売却し、売却資金を借金や社債の返済に回しました。A銀行の自己資本は強化されました。
めでたしめでたし、、、、では終わらなくて、、、

同じくイタリア国債を保有しているB銀行C銀行はこの結果どうなるでしょうか。
A銀行の強行売却は、イタリア国債の価格下落を引き起こしています。
この点がポイントで、B銀行やC銀行は含み損を抱えてしまうんですよね。

A銀行の自己資本強化は、B・C銀行の自己資本を犠牲にして達成されているにすぎないです。A銀行の強行売却により、まわりはもっと財政状態が悪化します、結局、「怖くてお金を貸し出すことができない、、、」という貸し渋り状態を引き起こし、危険度はさらに増してしまいます。

その結果、Liborは上昇を続けています


※ドイツはこの資産の圧縮で自己資本の強化を図る方針とのニュースが流れてました。ドイツ銀行は対応できるけれど、フランスの銀行が、資産価値の下落に引き込まれる恐れがあるという被害です。(ロイター:ドイツ銀行、資本増強必要額を20億−30億ユーロと推定

また、この資産圧縮被害については、日本の平成バブル時にも見られたと、こちらの書籍でも「世界同時バランスシート不況 」書かれていました。




<まとめ>
 短期資金調達が困難な間は、金融不安がつきまとうと考えた方が良さそうです。また、金融不安の元となっている欧州国債の価格低下を止めない限りは宜しくない状況に陥ると個人的には感じています。

というのも、2008年に起きた金融危機時も当然のように、このようなチャートを描いていたのですが、その描き始めた時期は2007年8月と、一年以上前から上昇を開始していました。

   リンク先

 上昇が過去と比べると、緩やかなぶん2008年の頃のような事態に陥ることはないとは思います。また、過去の経験からこういった最悪の危機を回避する準備や対策は整えようとすると思います。さらに、もしも危機が重大な事態に発展したら、各国首脳は何が何でも阻止を図ると思います。

※それなりの準備(危機発生時の対応)はしておいた方が良いように思いました。
、、、この元ネタを作ったのは11月の上旬でした。イタリアに飛び火する前にUPしようと思ってたのですが、先に作成していたコラムがあったのでUPが遅れてしまいました。





Copyright(C)2008 PEPE All Rights Reserved